【決算間近】あなたの棚卸は大丈夫?-飲食店の棚卸のやり方とその重要性- 

飲食店経営では、棚卸の管理が利益を左右します。
その中でも「適正な棚卸量」を知ることは、資金繰りや運営効率の向上に欠かせません。

適正な棚卸量とは、棚卸品が何日分の売上に相当するのかを示す指標で、飲食店では一般的に、3~5日分の売上に相当する棚卸量が理想とされます。

なぜ適正な棚卸量を維持するべきなのか?

棚卸量が適正であれば、営業の安定と効率向上につながります。
一方で、過剰在庫の状態では仕入れ費用が資金として滞留し、賞味期限が過ぎることで廃棄リスクも増加します。

適正に管理された棚卸量は、売上の機会損失を防ぎ、安定した飲食店経営をサポートする重要な指標です。

棚卸量の計算方法と必要なデータ

次に、棚卸量を求めるために必要なデータと計算方法を確認します。
今の棚卸量が適正か否かを知ることで、店舗にとって無駄のない棚卸の管理が可能となります。

必要なデータ

  • 当月末棚卸高:当月末に拾った棚卸の結果を集計した金額です
  • 当月の原価率:当月の売上高に占める仕入原価の割合です
  • 当月売上高:当月の総売上高です
  • 当月の営業日数:実際に営業した日数です

計算式と具体例

この計算式では、現在の棚卸量がお店の売上に対して何日分あるかを算出します。

棚卸量 = (当月末棚卸高 ÷ 当月の原価率) ÷ (当月売上高 ÷ 当月の営業日数)

例として以下のデータを使って計算してみます。

  • 当月末棚卸高:525千円
  • 当月の原価率:35%
  • 当月売上高:11,250千円
  • 当月の営業日数:30日

(525千円 ÷ 35%) ÷ (11,250千円 ÷ 30日)
=1,500千円 ÷ 375千円
=4日

この場合、棚卸量は4日分となり、一般的な3~5日分以内に収まっているため「適正」と判断できます。

是非、一度計算してみてください。

棚卸の具体的なやり方

適正な棚卸量を維持するには、棚卸を定期的に行い正確なデータを取ることが重要です。
以下に棚卸の基本的な流れとポイントを説明します。

1. 棚卸の準備

  • 棚卸リストの作成:棚卸の管理に必要な品目をリストにして準備します。
    仕入れ先や最新の単価なども記載しておきます。
    仕入時の注文票などの活用を、おススメします。
  • 棚卸の日時を設定:棚卸は毎月末に行います。

ワンポイント

「どこまでカウントすればいいのか?」
という質問をよく受けますが
基本は、減るもの全てです。
包材やストローなども、忘れずにカウントしましょう。

2. 棚卸の実施

  • 棚卸品の確認とカウント:リストに基づき、実際に棚卸品があるか確認し、数量を数えていきます。
    「正」の字を書いて数えた原始資料は、税務調査の際、必ず確認されます。
    捨てずに保管しておきましょう。
  • 未使用棚卸品の確認:調味料や乾物類は生鮮食品と比べると使用頻度が低いです。
    1ヶ月以上未使用の状態が続くようなら、容量変更を検討していきましょう。

3. 棚卸結果の記録と確認

  • 記録と評価:各棚卸品の数量を計算し、総額を算出します。
    特に高額な食材や数量が多い品目については注意します。
  • 適正な棚卸量との比較:計算した棚卸量と適正値と比較し、調整が必要かどうかを判断します。

過剰在庫のリスクとその兆候

計算した棚卸量が6日分を超える場合、過剰在庫の兆候があるため要注意です。
棚卸量が多くなる原因には誤発注や予測外の需要変動などが考えられます。

過剰在庫の状態が続くと、ジワジワと資金繰りが悪化していきます。
正しい棚卸で、飲食店経営の黄色信号を見落とさないようにして行きましょう。

過剰在庫がもたらすリスク

  • キャッシュフローの悪化:資金が棚卸品として眠るため、他の支払いに回す余裕が減ります。
  • 廃棄リスクの増加:賞味期限が近づき、ロスにつながりやすいストック(在庫)が増える。

もし棚卸で過剰在庫が見つかった場合
改善策としては棚卸品の保管方法を見直したり、棚卸品別に発注数量の見直しを検討しましょう。

適正な棚卸量を目指して棚卸品を減らす具体的な方法については、コチラの記事を参考にしてください

実践事例:棚卸量の最適化で改善された資金繰りと店舗運営

ある飲食店で、毎月末の棚卸量が6日分以上が常態化していました。
原因を調査すると、未使用の棚卸品が多く、管理も行き届いていない状況でした。

この店舗では食材棚を整理し、いくつかの棚を撤去することを提案しました。

棚を減らす案には当初反対意見もありましたが、結果として以下の改善が確認され、運営効率が向上しました。

  • 欠品の発生なし:棚を減らしても欠品は発生しなかった
  • 店舗内の動線が向上:余分な棚がなくなり作業がスムーズになった
  • 資金繰りの改善:不要な棚卸品が減ったことで、経営の負担が軽減された

継続的な見直しで経営力をアップさせよう

棚卸の実施と棚卸量の見直しは、飲食店経営において重要な役割を果たします。
過不足のない棚卸量を維持することで、売上機会の損失を防ぎ、フレッシュな食材でお客様に満足していただけます。
定期的に棚卸量を見直し、無駄が見つかれば発注頻度を調整するなどして、常に適正な棚卸量を維持しましょう。