記載例付き「給与等の支給額が増加した場合の所得税額の特別控除」の解説

給与支給額を前年より増加させた場合に適用される「所得税額の特別控除」は、経営者本人の節税効果と従業員満足度の向上を同時に図れるため多くの経営者にとって有効な制度です。
この記事では、飲食店ではあまり馴染がない教育訓練費等などの項目を排除して、単純に支給した給料が増えた場合の記載例をもとに、特別控除の受け方を解説します。
「給与等の支給額が増加した場合の所得税額の特別控除」(賃上げ促進税制)は、前年より給与支給額を増加させた事業主が、所得税額の控除を受けられる制度です。
この控除は、従業員の待遇向上を促すと同時に、経営者にとっても節税効果が期待できるものです。
特別控除の適用条件と判定基準
特別控除を受けるには、前年の給与支給総額と比較して、一定の割合以上の給与増加が必要です。
パート・アルバイトなどの非正規従業員に対する給料も含めて判定するため、飲食店にとって、利用しやすい制度です。
適用範囲と対象者の条件
特別控除を受けるには以下の要件を満たす必要があります。
- 前年からの給与増加割合:前年と比べ、今年の給与支給総額が
1.5%以上の増加→増加分 × 15%
2.5%以上の増加→増加分 × 30%の特別控除を受けることが可能です。
ただし、上限(所得税額の20%)があります。 - 判定対象:パートやアルバイトも含め、中途入社、退職者分も含めた給与支給額の合計で判定されますが、経営者や親族は対象外となります。
令和6年の確定申告で特別控除が使えるか判定してみよう
特別控除を受けるることができるかどうか、簡易判定シートで見てみましょう。
簡易判定シートのダウンロードはこちらから
※クリックするだけでダウンロードできます。
(注)
- 『C』(決算書の給料賃金)の金額が確定していない場合は、12月の試算表に計上されている「給与手当」の金額を使いましょう。
- 月末〆、翌月払いの給料の場合は、支給日ではなくR6年1月分~12月分で集計してください。
<増加割合1.5%以上2.5%未満の場合の計算例>記載例付き
- 令和5年度の給料総額が500万円
- 令和6年度の給料総額が510万円
- 特別控除・定額減税前の所得税が50万円
とします
要件判定
(510万円-500万円) ÷ 500万円 = 2% ≧ 1.5%
適用可
控除割合は15%
特別控除額の計算
(510万円-500万円) × 15% =15,000円
50万円 × 20% =100,000円
∴15,000円
給料増加分の15%と
特別控除・定額減税前の所得税(500,000円)の20%
いずれか低い金額が控除されます。
今回は、15,000円です。
確定申告書に添付する書類の記載例


<増加割合2.5%以上の場合の計算例>記載例付き
- 令和5年度の給料総額が500万円
- 令和6年度の給料総額が540万円
- 特別控除・定額減税前の所得税が50万円
とします
要件判定
(540万円-500万円) ÷ 500万円 = 8% ≧ 2.5%
適用可
控除割合は15%+15%=30%
特別控除額の計算
(540万円-500万円) × 30% =120,000円
50万円 × 20% =100,000円
∴100,000円
本来、給料増加分の30%が税金から控除される金額ですが
特別控除前の所得税(500,000円)の20%が上限のため
控除される金額は100,000円となります。
確定申告書に添付する書類の記載例


特別控除適用の手続きと注意点
<その1>
特別控除を適用するためには、決算時に給与支給額の増加分を確認し、申請書類を準備します。
事前の申請は不要ですが、記載例で使った明細書と明細書(付表1)が必要です。
(クリックすれば、必要書類が手に入ります)R7.3.10追記
<その2>
確定申告書二表の「特例適用条文等」の欄に
「措法10の5の4」の記載を忘れないでください。

それでも不安な時は
「給与等の支給額が増加した場合の所得税額の特別控除」については、配当控除後の(※)事業所得に係る所得税額が確定しないと計算できません。
ですから、一番最後の計算になります。
(※)事業所得以外の所得がある方は聞いてください。
疲れもピークを過ぎている段階で、集中力も途切れがちでしょう。
そんな方のために、「給与等の支給額が増加した場合の所得税額の特別控除」の明細書と明細書(付表1)の無料確認サポートしています。
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