【個人事業主向け】令和7年分 所得税「賃上げ税制特別控除」の記載例と解説

※この記事は法人税申告に関する内容ではありません。
個人事業主で従業員さんに給与を支払った方のための「所得税申告(令和7年分)」に関する記事です。
令和7年中に、従業員さんの給与を引き上げた個人事業主さんへ
令和8年(2026年)3月の確定申告で使える「給与等の支給額が増加した場合の所得税額の特別控除」について、わかりやすく解説します。
この特別控除は、「従業員さんへの感謝」が、ご自身の『節税』にもつながるという一粒で二度おいしい制度です。
該当しそうな方は、ぜひ最後までご覧ください。
この記事では、飲食店ではあまり馴染がない教育訓練費の増加・女性活躍・子育て支援などの項目を排除して、単純に支給した給料が増えた場合の記載例をもとに、特別控除の受け方を解説します。
「給与等の支給額が増加した場合の所得税額の特別控除」(賃上げ促進税制)は、青色申告書を提出する個人事業主で、前年より給与支給総額が1.5%以上増えている場合に受けられます。
特別控除の適用条件と判定基準
特別控除を受けるには、前年と今年の給与支給総額を比較する必要があります。
この給与支給総額には、パート・アルバイトなどの非正規従業員に対する給料も含めて判定するため、飲食店にとって、利用しやすい制度です。
適用範囲と対象者の条件(今までと変わりありません)
特別控除を受けるには以下の要件を満たす必要があります。
- 前年からの給与増加割合:前年と比べ、今年の給与支給総額が
1.5%以上の増加→増加分 × 15%
2.5%以上の増加→増加分 × 30%の特別控除を受けることが可能です。
ただし、上限(所得税額の20%)があります。 - 判定対象:パートやアルバイトも含め、中途入社、退職者分も含めた給与支給額の合計で判定されますが、経営者や親族は対象外となります。
<増加割合1.5%以上2.5%未満の場合の計算例>記載例付き
- 令和6年度の給料総額が500万円
- 令和7年度の給料総額が510万円
- 特別控除・定額減税前の所得税が50万円
とします
要件判定
(510万円-500万円) ÷ 500万円 = 2% ≧ 1.5%
適用可
控除割合は15%
特別控除額の計算
(510万円-500万円) × 15% =15,000円
50万円 × 20% =100,000円
∴15,000円
給料増加分(100,000円)の15%と
特別控除・定額減税前の所得税(500,000円)の20%
いずれか低い金額が控除されます。
令和7年の特別控除額は、15,000円です。
確定申告書に添付する書類の記載例


<増加割合2.5%以上の場合の計算例>記載例付き
- 令和6年度の給料総額が500万円
- 令和7年度の給料総額が540万円
- 特別控除・定額減税前の所得税が50万円
とします
要件判定
(540万円-500万円) ÷ 500万円 = 8% ≧ 2.5%
適用可
控除割合は15%+15%=30%
特別控除額の計算
(540万円-500万円) × 30% =120,000円
50万円 × 20% =100,000円
∴100,000円
本来、給料増加分の30%が税金から控除される金額ですが
特別控除前の所得税(500,000円)の20%が上限のため
令和7年の特別控除額は、100,000円となります。
令和7年の改正点
控除しきれなかった金額(120,000-100,000=20,000円)は、5年間繰り越すことができます。

繰越金額の記載については、様式が公表されていません。
確定申告書に添付する書類の記載例


特別控除適用の手続きと注意点
<その1>
特別控除を適用するためには、決算時に給与支給額の増加分を確認し、申請書類を準備します。
事前の申請は不要ですが、記載例で使った明細書と明細書(付表1)が必要です。
書式が公表され次第、この記事からも手に入るようにします。
<その2>
確定申告書二表の「特例適用条文等」の欄に
「措法10の5の4」の記載を忘れないでください。

令和7年からの変更点
給与の増加分に15%or30%を乗じた金額が
特別控除前の所得税の20%超える時or所得税がない時は、超過分を5年間繰り越すことができます。
つまり、赤字の場合でも、給与の支払いが増加している場合は手続きをすることで、翌年以降で控除できるわけです。
翌年以降で控除額の繰越分を所得控除に使うには「前年よりも1円でも雇用者給与が増えていること」が条件です。
繰越分を控除するときは増加率が1.5%に達していなくても使えます。忘れずに手続きを取っておきましょう。
ご質問等がございましたら、気軽に聞いてください。