税務調査は怖くない!飲食店経営者が知っておきたい重要な実践ポイント

この記事の最終更新日:令和7年7月5日

『税務調査』と聞くと税務署が、難クセ付けて税金を持っていくんじゃないかと不安を持たれる方がもいらっしゃるでしょう。

この記事では、その誤解を解きつつ、実態と対策をお伝えします。

「税務調査」とは、税務署の調査官(職員)が納税者のもとを訪れ、提出済みの申告書に記載された数字の根拠を調べる機会のことで
その対象は、個人事業主から法人まで幅広く、申告漏れや過少申告が疑われる場合に実施されることが多いです。

税務調査の実施時期について

税務調査の実施時期は、春と秋に集中しています。

春が多い理由は、確定申告が行われる3月15日までは税務調査が行われない為。

秋が多いのは、税務署は7月に人事異動がある為。

税務調査は、途中で担当者が変わる事はありません
なので、7月の人事異動後に、新たな調査先の洗い出しを始めます。
資料を調べたりしていると、実働は、お盆過ぎの秋になってしまう。

といった事情から、税務調査は春と秋
特に大型案件は秋が多いとされています。

税務調査の流れ

税務調査は通常、次のような流れで進行します。

  1. 事前通知: 税務調査が行われる数週間前に、税務署から関与税理士に電話があります。
    ※飲食店の場合、前触れもなく、ランチが終わるくらいの時間帯に訪問を受けることがあります。
  2. 実地調査当日: 担当調査官が、指定の場所(お店や事務所)を訪問し、経営者へのヒアリングから始まります。
    またこの時、筆跡を確認するためにメモの提出を求められることもあります。
    その後、必要な書類や帳簿の提示を求められ、逐次質問がされますので、対応してください。

    時間にすると、おおよそ10時頃から16時頃までで、お昼休憩は1時間外出します。
  3. 調査結果の報告: 実地調査以降は、税理士が窓口となって税務署と折衝します。
    問題となる部分があれば、修正申告の提出と追徴課税が課されます。

税務調査の日程は、税務署の都合で決められたものですから
税理士・納税者の都合で変更はできます。
ただ、どんなに愚図っても
一度連絡があった税務調査が、中止になる事はありません。
無理のない範囲で、対応するようにしてください。

飲食店はここを見られる!3つのポイント

飲食店に税務調査が入るのは、現金取引が多いからです。

ここからは、税務調査に対応できる取引の記録方法についてお伝えします。

1.売上の計上と現金管理

現金取引が多い飲食店では、売上の「打ち忘れ」が一番のリスク。
調査官は、原価率や備品使用量、おしぼり・割り箸の数などから、「あれれ?」と怪しむんです。

対策:紙の伝票に連番を振って、日々の売上を必ず通帳に入金。

細かいことですが、キャンセルになった売上伝票は、✕を付けて、他の売上伝票と一緒に保管しておかなければいけませんし、メモ代わり使うこともやめてくださいね。

こうして証拠を残せば、「漏れはありません」と胸を張って言えます。

もっとも、最近のセルフオーダーシステムでは、注文から会計までが一連なので、売上計上漏れの可能性は低いと考えられます。

意外な落とし穴がコレ!

コロナ禍を経験して、店外に自動販売機を設置した飲食店も多いのではないでしょうか。
自動販売機の売上は、計上漏れになりやすいです。
集金のルールを決めて、通帳に入金しておきましょう。

2.支払いの管理

毎日何かを買っているお店では、「レシートがある」は当然。
でも、それだけだと「本当に支払ったの?」と疑われることも。

対策:引き出しも〇〇円単位で通帳に記録し、架空経費ではない証拠を作りましょう。

通帳がリアルなお金の動きを記録する帳簿になります。

3.人件費の正確な記録

タイムカードやアルバイトの賄い箸は、意外とチェックされやすい項目。

対策:シフト変更はすぐ書き直し、源泉所得税や社会保険料の控除手続きも抜かりなく。

記録がしっかりしていると「ちゃんと経営しているんだな」と評価が変わります。

トラブル事例から学ぶ「誰の責任?」

あるチェーン展開中のお店で、店長が提供済み商品のキャンセル扱いにして、実際には売上から消してしまっていたことがありました。

調査官に「売上を教えて」と聞かれた経営者は「わかりません・・・」と正直に答えたところ、調査官は関係する伝票類のすべてを税務署に持ち帰り、時間をかけ隅々まで調べ上げました。
その結果、上記の様な店長の行為が判明して、修正申告+追徴課税になってしまいました。

この事例からわかるのは、「売上漏れは経営者の責任」。
従業員の監督は経営者がするべき。
信頼して任せていたとしても、法律的に責任を問われるのは、経営者です。

後日、改善策として報告体制の整備会話による風通しの改善を進めたところ、結果的に店舗数も増え、地域に愛されるお店になりました。
「怖いイメージ」がむしろ組織を強くした好例です。

調査前にこれだけはやっておこう!2つの対策プラスα

  1. 入出金の記録はあとから説明できる状態に
    → 複数の証拠(伝票+通帳+レシート)で裏付ける。
  2. 従業員と記録のルールを共有
     → 「伝票は消さない・シフト変更はメモ必須」など、全員共通のルールに。

飲食店のための税務調査回避レポート~事例から学ぶ税務調査回避法~(付録)

実は、2021年に作成した動画「飲食店のための税務調査回避レポート~事例から学ぶ税務調査回避法~」が、地味に視聴回数を稼いでいたので、こちらでもご紹介しましょう。

古い動画で、リンク切れもあります。
内容も一部この記事と重複していますが、ここで語られていることは、今でも十分に通用する内容です。

税務調査に入られないようにするノウハウをお伝えしている動画に興味がある方は、ぜひご覧ください。

「税務調査回避レポート」を受け取られますと、林からのメルマガが届きます。

本当に税務調査は怖くない

実は、きちんと経営しているお店ほど、調査はスムーズに進むものです。
今回ご紹介したように、売上・出金・人件費といった3要素を丁寧に管理しておけば、普段の業務の延長で調査に対応できます。
「浮き彫りになると直せるチャンス」と捉えれば、税務調査も前向きなステップに変わるはずですよ。

今すぐできる一歩

今週からまず、伝票に「連番」を振って、証拠づくりをしてみませんか?

困ったとき(例:「店長が変わったタイミングで、お店のルールが曖昧になってしまった。」など)は、いつでもご相談くださいね。
あなたが安心してお店に立てるよう、心から応援しています!